不倫慰謝料を一括で払えない場合、分割払いは可能?
不倫慰謝料請求では、100万円以上の大金を請求されることも少なくありません。
この場合、「そんな大きなお金はすぐに用意できない」ということも多いのではないでしょうか。
慰謝料請求では、原則一括払いを求められます。
しかし、どうしても支払えない場合、一括ではなく分割で支払うことはできないの?と考える方もいらっしゃるでしょう。
今回は、慰謝料は必ず一括で支払わなければならないのかという疑問から、分割払いは認められるケースはあるのか、支払い期限の延長は可能か、利息はつくのかという疑問まで解決します。
1 不倫慰謝料は一括払いが原則
不倫慰謝料は、「一括で支払わせる」というのが一般的であり原則です。
これについて、法律上一括払いでなければいけないとの規定はありませんが、慰謝料に関しては一括払いが定番となっています。
裁判所における請求についても一括です。
というのも、不倫慰謝料という性質上、不倫された配偶者は精神的にも大きな損害を被っており、問題解決のためにも直ちに支払うべきだと考えられるからです。
また、理由はこれだけではなく、事後トラブルを防ぐという目的もあります。
分割払いにすると、次のような問題が発生する可能性があります。
・支払いが行われない、滞る
・感情的な問題を速やかに解決できない
分割払いの場合、最初はきちんと振り込まれることがほとんどですが、途中で支払われなくなってしまうリスクがあります。
請求した側にとってみれば、きちんと合意した金額が支払われないという不利益を被るだけでなく、相手に対する不快感も大きくなってしまうでしょう。
また、支払い者の側としても、支払いを行わない場合は強制執行で給与が差し押さえられるなどの手続きが進行してしまう可能性があります。
さらに、不倫慰謝料を分割で払うことになれば(分割が何回になるかはケースバイケースですが)、その支払い期間中ずっと相手方との縁を切れなくなってしまいます。
このような事後的なトラブルを防ぐためにも、原則一括払いが推奨され、好まれるのです。
なお、一括払いの場合、支払い方法として示談の場で現金による受け渡しを行うか、銀行振り込みを行うことになります。
2 慰謝料の分割払いは認められる?
⑴ 相手方の納得次第
このように、慰謝料は一括払いが原則ですが、分割払いは絶対的に不可能なのかと言えばそんなことはありません。
慰謝料を分割払いにしてはいけないという法律上の制限もありませんので、両者が合意すれば分割払いもできます。
必ずしも借金をしてまで一括で支払う必要はないのです。
しかし、相手方が分割払いに同意してくれるかどうかが問題になります。
相手方からすれば、先にお話しした通り不払いのリスクを負うことになるのですから、簡単に納得してもらえないケースもあるでしょう。
相手が交渉に応じてくれるケースとしては、どうしても金額を落としたくない場合です。
例えば「300万円の請求でこれ以下の慰謝料金額は考えられない」という場合は、金額はそのままで分割に応じてくれる可能性もあるでしょう。
分割払いの場合の示談書の文例としては、以下のようなものが考えられます。
「乙は、甲に対し、本件不貞行為による損害賠償債務として、金○○万円の支払義務のあることを認め、これを分割して令和○年○月から△年△月までの間、毎月末日限り、月額○万円を甲の指定する下記金融機関の口座へ振り込む方法により支払う。振込手数料は、乙の負担とする。」
⑵ まずは減額交渉で金額を下げる
以上の理由から、分割払いの交渉は最終手段として捉えるべきなのですが、では支払えない金額の場合に最初にすべきことは何なのでしょうか?
支払えないくらい大きな金額を請求された場合には、まず減額交渉を行うべきといえます。
勘違いしている方も多いのですが、請求された額=確定の支払い金額ではありません。
相手に弁護士がついている場合や、書面で請求された場合、請求された額をそのまま支払わなければいけないとプレッシャーに感じる方も多いでしょう。
しかし、最初に提示された金額の多くは、相場より高いのが一般的です。
適切に減額交渉を行えば、ギリギリ支払える金額まで落とせる可能性もあります。
また、不倫の内容によっては、大幅な減額が可能であったり、支払わずに済んだりする可能性もあります。
減額交渉時の注意点としては、相手に丁寧にお願いすることです。
不貞行為の事実があるのであれば、相手に損害を与えたことは明らかです。
謝罪を行った上で、支払いたいが支払い能力がないことを説明しましょう。
3 分割払いの期限延長はできる?
一括払い、分割払いどちらもいえることですが、示談合意の際には必ず支払いの期日を設定します。
これに遅れるようなことがあれば、強制執行の可能性もあるため、期日はきちんと守る必要があることを忘れないでください。
しかし、慰謝料の分割払いの合意後、支払い期限を延長してほしい場合もあるでしょう。
どうしても期日に支払えない場合は、事前に相手方に知らせましょう。
このとき、支払えない理由、いつなら支払えるのかという点まできちんと説明することが大切です。
「この人は支払わないつもりだ」と思われたら、法的な手続きに出られてしまう可能性もあります。
そのため、丁寧に謝罪と説明をして、交渉する必要があるでしょう。
また、支払い期限は無限に伸ばせるわけではありません。
常識的に考えて1〜2週間、長くても1か月程度だと考えてください。
「○月○日に支払います。」と言ったら、その期日は守るようにしましょう。
【利息も払わなければいけない?】
支払い期限を延長した場合には、利息は発生するのでしょうか?
この答えとしては、利息が発生します。慰謝料や養育費なども貸金と同様に支払いが遅れた場合には利息がつくことになっているのです。利息に関しては、示談の際に決まった遅延損害金利率があればその利率が適用されます。
では、示談の際に遅延損害金の合意をしていなければ利息は発生しないのかと言えば、そんなことはありません。民法419条では、債務不履行があった場合には、損害賠償の額は法定利率によって定めると規定しています。
したがって、慰謝料不払いの場合に損害賠償に関する決め事をしていなかった場合でも、本コラム作成時点においては3%までの法定利率はかかってしまいます。
このように、期限を延長してもらうと利息が発生するため、負担は大きくなります。できるだけ期日に支払うようにしましょう。
4 不倫慰謝料が支払えない場合は弁護士に相談を
まずは、支払えないくらい高額な金額で示談しないことが大切です。
不倫慰謝料が高額すぎる場合、まずは支払い能力がないことを説明し、減額交渉を実践してみてください。
自分で交渉していても相手が納得してくれない場合は、弁護士に相談してください。
弁護士であれば、個別ケースごとの具体的な相場に合わせて対応し、減額交渉や分割交渉まで任せられます。
弁護士に依頼するだけで精神的な負担も軽くなることが多いので、まずはお気軽にご相談ください。